マグジー・ボークス マイケル・ジョーダンを相手にしたNBA最小のスーパースター

マグジー・ボークス マイケル・ジョーダンを相手にしたNBA最小のスーパースタースポーツ

マグジー・ボーグス(Muggsy Bogues、本名:タイロン・カーティス・ボーグス、英: Tyrone Curtis Bogues、1965年1月9日- )は、アメリカ合衆国の元バスケットボール選手。メリーランド州ボルチモア出身。出身大学はウェイク・フォレスト大学。身長は160 cmで、NBA史上最小の選手であった。

アメリカの4大プロスポーツといえば、野球、アメリカンフットボール、アイスホッケーそしてバスケットボールの四つです。その中で選手の年俸が一番高いものは、意外にもバスケットボールななのです。その理由のひとつは、プレーヤーの数が少ないからといわれています。莫大な収益を少ない人数で分配できれば、その分、選手の年俸は高くなるからです。そんな限られた人数で構成されるプロバスケットボールの世界にすごい選手が居たのをご存知でしょうか?その男の名はマグジー・ボーグス。アメリカのプロバスケットボールと言えば、身長190センチなんてあたりまえで、2メートルを超える選手も珍しくありません。ところが、マグジーの身長はなんと160センチ!160センチといえば日本の中学生でも大勢います。そんな日本の中学生ほどの身長のプレーヤーがコートを縦横無尽に駆け回って大活躍をしていたのです。今回はNBAで伝説となった彼についてに迫っていこうと思います。

生い立ち

ボルティモアは現在も治安はあまり良くない

マグジーは1965年1月9日、メリーランド州ボルティモアに四人兄弟の末っ子として生まれました。本名はタイロン・カーティス・ボーグス。当時のボルティモアはあまり治安がいい街とは言えず、銃撃事件もよく頻発しており、マグジーも子どものとき流れ弾により、右腕を負傷したことがありその破片は取り除かれないまま生活を送る有様だったそうです。3歳になりバスケットボールで遊ぶようになったマグジーは、成長すると地元のレクリエーションセンターのコートで練習に励むようになります。

高校時代のマグジー(中央)とチームメイト

そしてこのときの練習仲間に、後のNBAプレーヤーであるレジー・ルイス、デヴィッド・ウィンゲートなどがいて、みんなで地元の公立高校ポール・ローレンス・ダンバー高校に進み、バスケットチーム、ポエッツに所属しました。地元最強の高校生チームで有名だったようです。もちろんマグジーもその高校のチームですばらしい活躍を見せ、小柄ながらすごい選手がいると評判になりました。

大学進学とNBAドラフト

ウェイクフォレスト大学

その後、マグジーはお隣ノースカロライナ州の名門、ウェイクフォレスト大学に進学します。大柄な選手に混じってスピード感溢れるプレーでその存在を輝かせ、アシストとスティールでは他の追随を許しませんでした。さらに1986年のスペイン・バルセロナで行なわれたバスケットボール世界選手権のアメリカ代表にマグジーは選出されます。マグジーたちの活躍によりこの大会でアメリカは金メダルを獲得しました。その後、1987年のNBAのドラフトで、ワシントン・ブレッツに指名され入団します。

マヌート・ボルとマグジー

しかしこのときブレッツがマグジーを指名したのはちょっとおもしろい理由からだったようですね。当時のブレッツにはNBAで最も身長が高い、231センチのマヌート・ボルという選手がいて、ブレッツはボルとマグジーを並べて身長差の話題を作り盛り上げたかったということなのです。実際ブレッツではマグジーは出場機会は非常に限られていました。

移籍と大活躍

シャーロット・ホーネッツ

翌年、マグジーはノースカロライナ州シャーロットに新たに設立された、シャーロット・ホーネッツ(現在のニューオリンズ・ペリカンス)に移籍します。この移籍によりマグジーは一気にその才能を開花させます。まさにチーム名、ホーネッツそのままにスズメバチのように相手に衝撃を与えたのです。参考にマグジーは10年間のこのチームのプレーで、5557アシストと1067スティールを記録しており、これらの記録は現在でもチームの最多記録です。また1840リバウンドは10位の記録です。マグジーの特徴はスピードと力強さでした。さらに低身長であることをも武器としたのです。大柄な相手選手がドリブルでボールを運びますが、マグジーは予想もつかない速さで接近し、思いもしない低い位置でそのボールを奪うのです。これを一度経験すると相手はマグジーの襲撃を怖れて安易にドリブルプレーができなくなります。

コートを縦横無尽に駆けるマグジー

またマグジーは小さいのでどこにいるのか見失ってしまうことが多く、相手選手はボールを両手でマグジーが絶対に届かない頭の上に掲げて、マグジーの位置を確認するほどでした。他にも特徴としてマグジーは大きな選手との多少の接触でもびくともしません。逆にその距離を利用して、低い位置でボールを奪い、瞬間的にトップスピードにギアをいれて、相手が追いつく前にゴールを奪うのでした。

マイケル・ジョーダン

シカゴ・ブルズ

大活躍のマグジーでしたが、あのマイケル・ジョーダンとの試合で一度だけメンタル攻撃を受け、大きく調子をくずしてしまいます。1995年のプレーオフ、東地区ファーストラウンドでシカゴ・ブルズとの対戦中に、ブルズのジョーダンがボールを持ったマグジーのディフェンスにつきました。そしてジョーダンは3ポイントを狙おうかという位置にいたマグジーに向かって、「打ってみろよ、このくそチビ野郎!」と叫び、わざと距離をとったのです。この挑発に動揺したマグジーは3ポイントシュートを外してしまい、結局チームも敗れてしまいました。これ以降マグジーの3ポイントの調子は戻ることはありませんでした。マグジーはこのことを振り返って、後に、「あのプレーが自分のバスケキャリアをむちゃくちゃにした」と言ったそうです。

マグジーを見下ろすジョーダン

この挑発行為は「トラッシュトーク」と言って、NBAにおいてはひとつの見せ場でもあったのです。あえて敵を挑発し調子を乱しまた自分を鼓舞するという行為なのです。しかし、真面目な性格であったマグジーはこれをうまくいなすことができなかったようです。ただ、マイケル・ジョーダンはNBAでも5本指に入るトラッシュトークの名手であったのでしょうがないかもしれません。

チームの司令塔として

ホーネッツの中心だったマグジー

彼の在籍したホーネッツは必ずしも常勝チームではありませんでしたが、マグジーは強力なリーダーシップを発揮し小さい体をフルに使い、常に全力でプレーしました。ポイントガードとしてチームの司令塔であり続け、高いバスケットボールIQをコート上に示し続けました。また、マグジーはチームNo.1の人気プレーヤーであり、シャーロット市長選に立候補すれば間違いなく当選するだろうと言われるほどでした。他にも活躍したエピソードとして、抜群のジャンプ力とタイミングでキングコングの愛称で知られた、身長213センチのパトリック・ユーイングをブロックしたこともあります。つまり3メートル近い高さから放たれたシュートを空中で手を出して得点を防いだのですからすごいですね。

金メダリストでもあるパトリック・ユーイング

マグジーは現役時代に通算39ブロックを記録しています。余談になりますが、後にこのパトリック・ユーイングとともにマグジーはマイケル・ジョーダン主演のコメディ映画『スペース・ジャム』に出演しています。この映画はヒット作となり、全世界で2億3千万ドルの売上を上げています。ホーネッツから移籍後はサンフランシスコやカナダ・トロントのチームでプレーし、2001年に現役を引退しました。引退後は女子プロチームのヘッドコーチや高校男子チームのコーチなどを務めました。

その後と現在の活動

信じることの大切さ…

2016年には来日し、NHKのドキュメンタリー番組「奇跡のレッスン~世界最強コーチと子どもたち~」にも出演しました。東京のある中学校のバスケットボールチームの臨時コーチとなったマグジーはまず最初に選手たちに、「楽しもう」と声をかけます。そして本当に楽しい練習メニューを与えます。そしてその楽しい動きは実際に試合での好プレーにつながっていくことを生徒たちは学んでいくのでした。番組の中でマグジーが選手たちに語った言葉の中にこういうものがありました。

自分だけは自分を信じるんだ。それには“すべてが可能だ”と信じるマインドセットが必要なんだ。

さらに、

運命は自分でコントロールしなければいけない。人はみな最高の人生を生きるべきだ。でも自分自身がそれを信じていないと意味がないんだ。

「自分を信じるんだ」ということを特に強調していますね。身長160センチではNBAのプレーヤーになるのは無理だと誰もが言いました。しかし、そんなことはないと思っていたのはマグジーただひとりでした。その強い信念が自分の思いを現実のものとし、NBAのトッププレーヤーとなったのです。また現在のコロナ禍の中、NBAはジュニア世代向けのトレーニングのレクチャー動画の配信をしていますが、マグジーはこの企画に参加しています。これは狭いスペースでできるワークドリルとともにステイホームやソーシャルディスタンスの重要性を学べる動画なのですが、マグジーが公開したのはボールバウンシングドリルの動画です。片足で立ち片手でドリブルするという体幹強化を図る方法を示しています。その他にもマグジーは積極的に講演活動も行っています。

指導者として活躍するマグジーも是非見てみてくださいね

モチベーションアップやスピーキングスキル向上を目的とするもので、非常に人気があるようです。また、小さい人向けのブランドのアパレル製品開発の会社も立ち上げており、アメリカの成人男性の3分の1は身長175センチ以下なので、充分セールスは見込めるようです。何事もあきらめずに、自分を信じれば、どんな目標も達成できる。マグジーの歩みをみればそれは事実だと納得させられます。彼の人生はまだまだ途上でこれからまた何かとてつもないことをやってくれるかもしれませんね。

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