SPring-8は日本にある! 世界に開かれた最先端の研究施設とは?

SPring-8は日本にある! 世界に開かれた最先端の研究施設とは?スポット・観光地

SPring-8(スプリングエイトSuper Photon ring-8 GeV)は、兵庫県佐用郡佐用町光都一丁目1番1号、播磨科学公園都市内に位置する大型放射光施設である。電子を加速・貯蔵するための加速器群と発生した放射光を利用するための実験施設および各種付属施設から成る。名前の8は電子の最大加速エネルギーである8GeVに因んでつけられている。

みなさんは国内外から研究者たちが押し寄せる「SPring-8」という研究施設が兵庫県にあるのをご存知ですか?SPring-8の直径約500mの大きな円形の巨大な研究施設です。世界に開かれた共用施設として国が管理をおこなっています。国によって、約1100億円の建設費用をかけて建てられ、施設の運転や、維持・管理費用には年間85億円〜65億円の予算がつけられています。これほど巨大な施設と莫大な費用のかかるSPring-8ではいったいどのような研究ができるのでしょうか?今回は日本が誇る最先端の研究施設「SPring-8」について詳しく解説します!

世界中から研究者が殺到! SPring-8でできることとは?

SPring-8上空写真

SPring-8と同じ様な研究施設は各国に建設されています。では、SPring-8ではどんなことができるのでしょうか?まず、ここでは研究に必要な「放射光」を発生させることができます。「放射光」とは、太陽の100億倍の明るさを持つ光のことです。電子ビーム(レーザーの様なもの)を磁石で曲げることで、「放射光」を発生させる事ができます。SPring-8には、研究に必要となる「放射光」を発生させ、各実験室に届ける「ビームライン」という研究装置が備わっています。

ビームライン実験図 ※東北大学より

光には、物質に当たると跳ね返ったり吸収される性質があります。人間の目は、その跳ね返った光を見ることで物の色や形を認識する事ができます。光の代わりに、太陽の100億倍の明るさを持つ「放射光」を物質に当てることで、その物質を原子・分子レベルで分析することが可能となります。この「放射光」を使った研究により、調べたい物質がどのような元素をどれぐらいの比率含んでいるのかをSPring-8では解析することができるのです。

SPring-8を利用する人たちとは?

80億ボルトのビームを送り出す設備

SPring-8は学術の分野では理化学研究所やに日本原子力研究所の研究者、国内の大学の研究員などが使用します。また、企業の研究開発にも利用されます。製薬会社や製鉄会社など、30社以上がSPring-8の研究施設を利用し、製品の研究開発をおこなっています。世界各国にある放射光施設の中でも、SPring-8は世界最高レベルのエネルギー・明るさ・安定性を誇っています。そのため、海外からも多くの研究者が訪れます。

宇宙科学や医療などの学術に大きく貢献

小惑星リュウグウ

SPring-8での研究は、宇宙科学や医学、考古学などの学術の研究に大きな影響を与えました。「放射光」を使った研究により、インフルエンザウイルスが持つ増殖に関わる酵素酵素の構造が判明。新薬開発に繋がった例もあります。考古学の研究もSPring-8により進歩しました。「放射光」を使った研究をおこなうことで、貴重な考古遺物を破壊せず、元素の量や種類を知る事ができるようになりました。2020年に小惑星探査機「はやぶさ2」が小惑星リュウグウから持ち帰った砂の解析もSPring-8でおこなわれています。

企業がより良い製品を作るための研究開発

あなたの髪質もSPring-8が守ったのかも?

企業の研究開発にもSPring8は欠かせない存在です。SPring-8での研究により、仕組みや構造が明らかになり、製品開発に生かされた例も多数あります。身近な例では、シャンプーなどのヘアケア用品の開発にSPring-8を使ったケースがあります。髪をツヤがなくなる原因を、SPring-8で細胞レベルで分析したところ、加齢に伴って増える髪のうねりがツヤ低下の原因であることが判明。その研究結果にもとづき、髪のうねりを緩和する成分を配合したヘアケア用品の発売につなげました。低燃費のタイヤの開発にもSPring-8での研究成果が使われています。SPring-8でタイヤのゴムの内部構造を観察したところ、1万分の1ミリメートルの領域の構造が、燃費性能に関わっている事が判明。そのデータをもとに材料を調整し、今までよりも燃費を向上させたタイヤを作ることに成功しました。

警察がおこなう科学捜査にも使われている

1998年に和歌山県で起こった「和歌山毒物カレー事件」の捜査にもSPring-8が利用されました。「和歌山毒物カレー事件」とは、夏祭りに提供されたカレーにヒ素が混入され、67人が急性ヒ素中毒に。そのうち4人が亡くなったという事件です。この事件に使われたヒ素と、犯人の自宅にあったヒ素が同一のものかを分析するために、SPring-8が使われました。分析の結果、2つのヒ素が同一のものであることが判明。この鑑定結果が事件進展への決め手となりました。

SPring-8の施設利用料は? 一般見学はできるの?

SPring-8内部

SPring-8の利用料は一体どれぐらいなのでしょうか?一般見学についてもご紹介します!SPring-8を利用する場合には、毎年2回ある研究課題の募集に応募する必要があります。その後、審査委員会により選定。採択されると利用が可能になります。SPring-8は、研究成果を公表しない場合の利用料は、1時間あたり6万円。24時間で144万円の利用料が必要となります。ただし、SPring-8での研究結果を公表する場合は、国が負担してくれるため、無料で利用することが可能です。

播磨科学公園都市には様々な施設がある

他にもSPring-8には、研究者が利用する宿泊施設や食堂、売店なども完備されています。また、播磨科学公園都市PR館「オプトピア」には、SPring-8に関する模型やパネルが展示されており、入場料無料で誰でも見学することが可能です。15名以上の団体であれば、SPring-8の見学ツアーを申し込むことができます。ツアーでは、説明員の方が同行し、施設の一部を案内してもらえます。SPring-8では年に1度、施設公開の日があります。普段は研究関係者しか立ち入ることのできない、研究施設の内部を見学する事ができます。

まとめ

1.SPring-8は日本が世界に誇る最先端の研究施設!「放射光」を使った研究で、物質を原子・分子レベルまで解析することが可能。

2.SPring-8は学術や産業、行政などのさまざまな分野で活躍している!SPring8での鑑定結果が事件解決の決め手になったケースも。

3.SPring-8は研究成果を公表すれば利用料が無料に。年に1回施設公開に日がある!

SPring-8は宇宙科学や考古学などの学術から、シャンプーや車のタイヤなど身近なものまで、さまざまな分野に貢献している研究施設です。人類の飽くなき探究心を支えてくれる重要な施設であり、今後もさらにさまざまな分野で活用される事が期待されています。年に1度の施設公開の日には、一般の方も内部まで見学する事が可能です。気になった方は足を運んでみてはいかがでしょうか?

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